相続放棄をする理由・動機について
1 理由・動機は広く認められている
相続放棄をする理由・動機には制限がありませんので、相続人の方の真意に基づく限り、どのような理由でも相続放棄をすることができます。
相続放棄をする理由の典型的なものとしては、お亡くなりになられた被相続人にめぼしい財産がなく、負債のみがあるという場合(いわゆる債務超過に陥っている場合)が挙げられます。
そのほか、よくある相続放棄の理由としては、被相続人から生前に充分な贈与を受けている、遺産を分散させたくない(特定の相続人に遺産を集中させる)、他の相続人や親族と関わりたくないというものがあります。
2 債務超過
債務超過に陥っているケースとしては、亡くなられた方(被相続人)がクレジットカード会社や消費者金融に借入れをしていたケースや、税金・社会保険料を滞納していたケース、入院等をしていて治療費が未払いであったケース、知人の連帯保証人になっていたケースなどがあります。
また、被相続人の負債の状況は明確にはわからないものの、被相続人がかつて事業を営んでいて多額の借金をしていたかもしれない場合や、知人の連帯保証人になっていると聞いたことがある場合など、「多額の負債を有しているおそれがある」という場合でも相続放棄の理由とすることができます。
3 多額の贈与を受けている
生前に多額の贈与を受けている場合,他の相続人とのアンバランスを解消するため,贈与を受けている人が相続放棄をするということがあります。
もちろん,遺産分割協議において遺産を取得しないという形でもよいのですが,より確実に他の相続人に遺産がいきわたるようにするため,裁判所を通じて相続放棄をし,法的に相続人でなくなるということをします。
4 遺産を分散させたくない
家業を継ぐ相続人に全ての財産(負債も含む)を集中させるという考えのもとで、その他の相続人全てが相続放棄をするというケースもあります。
遺産分割協議でも同じような効果を発生させることができますが、遺産分割協議書に署名押印を得るまでは確実ではないということと、債務がある場合に免責的債務引受契約をしなければならないという煩雑さがありますので、相続放棄の方が確実かつ簡便に実現できます。
5 他の相続人と関わりたくない
パーソナリティに問題のある相続人がいて、トラブルを回避するために遺産分割協議をしたくない場合や、被相続人が離婚後、再婚をして別の家庭を持っているため相続に関与すべきでないという場合にも相続放棄手続きを用いることがあります。