相続財産に手をつけてしまったら
1 遺産分割協議をしてしまった
遺産分割協議は、遺産を取得する意思を表す行為であるという理由により、法定単純承認事由(相続放棄が認められなくなる事由)に該当する行為とされています。
したがいまして、遺産分割協議を行ってしまった場合、原則として相続放棄は認められないことになります。
もっとも、現実的には、遺産分割協議を行ってしまった後になって、未払いの税金や連帯保証債務などの相続債務が発見されるという場合もあります。
このような場合、遺産分割協議の際の意思表示が錯誤に基づくものであったとして、遺産分割協議を取り消すという法的構成をとることができる可能性があります。
なお、民法改正前は、遺産分割協議が錯誤によるものであった場合には、遺産分割協議は無効であるとされ、相続放棄が可能となる旨の裁判例がありました。
遺産分割協議を行っただけでなく、遺産分割協議に従い不動産を取得した相続人について、相続放棄を認めてもらった実績もございます。
遺産分割協議を行ってしまったとしても、あきらめずにご相談ください。
2 遺産を売却してしまった
不動産や、自動車・バイク等の価値のある動産を売却してしまう行為も、法定単純承認事由に該当する行為となります。
そのため、このような行為をしてしまった場合も、基本的には相続放棄ができなくなります。
もし売却してしまったら、とにかくすぐに買手や仲介業者へ連絡し、錯誤を理由として売買契約を取り消し、元に戻してもらうよう相談しましょう。
相手のいる話なので必ずしも成功するとは限りませんが、実際にバイクを売却してしまった直後にディーラーに事情を説明して、売却金を返還するとともにバイクを取り戻すことができたという事例もあります。
このようにすることで、法定単純承認事由に該当する行為が消滅する結果、相続放棄が可能となります。