相続放棄をしても受け取れるお金

文責:弁護士 鳥光 翼

最終更新日:2024年04月15日

1 保険金

 被相続人が生命保険に加入していた場合、被相続人がお亡くなりになられたことにより、相続人に生命保険金が支払われることがあります。

 相続人の方が受取人になっている場合(生命保険金の請求権が相続人固有の権利である場合)は、生命保険金を受け取っても法定単純承認事由に該当する行為とはならず、相続放棄をすることができます。

 ただし、受取る前に念のため保険会社の担当者に連絡をし、受取人が相続人であること、受取ろうとしている生命保険金は相続人固有の権利に基づくものであることをしっかりと確認しましょう。

 被相続人が生前に入院等をされていた場合の損害保険金等については、被相続人の権利に基づくものである可能性があり、相続財産を構成することもあるので、ひとまずは受け取らないようにしましょう。

2 葬儀に対する給付金

 被相続人が国民健康保険等に加入していた場合、健康保険組合等から葬儀の補助のために給付金が支給されることがあります。

 この給付金は、一般的には葬儀を行った者に対して支払われると定められており、給付金を受け取る権利は葬儀を行った者固有の権利と考えられます。

 そのため、受け取っても法定単純承認事由に該当する行為にはなりません。

 ただし、実際に給付金の申請をする際には、給付金の裏付ける法律や条例をしっかり参照し、葬儀を行った者固有の権利として支給するものであることを窓口で確認しておく必要があります。

3 未支給年金

 被相続人が年金受給者で、月の途中でお亡くなりになると、本来支払われるべきであった年金(未支給年金)が遺族に支払われることになっています。

 たとえば、国民年金については、未支給年金は被相続人の配偶者、子、父母・・・という順番で受け取ることができる旨が定められています。

 つまり、未支給年金は被相続人の相続財産ではなく、受け取ることができる人固有の権利ですので、受け取っても法定単純承認事由に該当する行為にはなりません。

 もっとも、これも他のお金と同様に、念のため受取人固有の権利に基づいて支給されるものであることを窓口で確認しましょう。

 

【参考条文】(国民年金法)

(未支給年金)

第十九条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

2 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。

3 第一項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。

4 未支給の年金を受けるべき者の順位は、政令で定める。

5 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

 

参考リンク:e-Gov法令検索(国民年金法)

 

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